青い空に雄大に泳ぐ、こいのぼり。見ているだけで、なんだか清々しい気持ちになりますよね。5月5日の「端午の節句」が近づくと、あちらこちらでその姿を見かけるようになります。
こいのぼりは、ただの季節の飾りではありません。そこには、子どもたちの健やかな成長を願う、親や家族の深い愛情が込められています。そして、日本の美しい伝統や文化がぎゅっと詰まっているんです。
でも、いざ「こいのぼりって、どうして飾るの?」「吹き流しの五色にはどんな意味があるの?」「いつからいつまで飾ればいいの?」と聞かれると、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「こいのぼり」に関するあらゆる情報を、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。特定の商品をおすすめするような宣伝は一切ありません。純粋に「こいのぼり」という文化を深く知っていただくための、お役立ち情報だけを詰め込みました。
この記事を読み終わる頃には、あなたも「こいのぼり博士」になっているはず。由来や歴史といった知識から、飾り方やしまい方といった実用的な情報まで、これを読めばこいのぼりの全てがわかります。ぜひ、ご家族でこの記事を読みながら、来る端午の節句をより一層楽しんでみてくださいね。
こいのぼりの基本の「き」~意味と歴史を知ろう~
まずは、こいのぼりが一体何なのか、その基本的な部分から見ていきましょう。意味や歴史を知ることで、こいのぼりへの愛着がさらに深まるはずです。
こいのぼりって何?~込められた願い~
こいのぼりは、5月5日の端午の節句(たんごのせっく)に、男の子の健やかな成長と立身出世を願って、家の庭先などに飾られるのぼりです。鯉の形をしていることから「こいのぼり」と呼ばれています。
では、なぜ「鯉」なのでしょうか?
その由来は、中国の古い伝説にあります。黄河(こうが)という大きな川の上流に、「竜門(りゅうもん)」という非常に流れが急な滝がありました。多くの魚がその滝を登ろうと挑戦しましたが、あまりの激流に誰も登ることができませんでした。
しかし、ある一匹の鯉だけが、必死に努力を重ね、見事に滝を登りきったのです。すると、その鯉は天に昇り、龍になったと言われています。この伝説から、困難な関門を突破して成功を収めることを「登竜門(とうりゅうもん)」と呼ぶようになりました。
鯉は、そんな激流に逆らって滝を登るほどの生命力と力強さを持つ、縁起の良い魚とされています。この「登竜門」の伝説にあやかって、「我が子も、人生という流れの中でどんな困難にも負けず、たくましく成長し、立派な人物になってほしい」という強い願いを込めて、鯉のぼりを空に泳がせるようになったのです。
つまり、こいのぼりは単なる飾りではなく、親から子への力強いエールそのものなんですね。
こいのぼりの歴史~いつから始まったの?~
こいのぼりの風習が始まったのは、江戸時代の中期、武士の家からでした。
もともと、端午の節句には「幟(のぼり)」を立てる習慣がありました。これは、神様が天から降りてくるときの目印(依り代)とするためや、家に来た悪いものを追い払うためのものでした。
武家では、男の子が生まれると、家紋の入ったのぼりや、戦で使う「馬印(うまじるし)」という旗指物(はたさしもの)を家の前に立てて、盛大にお祝いする風習があったのです。これは、跡継ぎの誕生を世に示し、神様のご加護を願うためのものでした。
この風習が、やがて商人や町人の間にも広まっていきます。しかし、武士のように家紋の入ったのぼりを立てることは許されませんでした。
そこで、町人たちが考え出したのが、先ほど紹介した「登竜門」の伝説にあやかった「鯉ののぼり」でした。「武士がのぼりを立てるなら、うちは景気の良い鯉ののぼりを立てようじゃないか!」という、江戸っ子らしい粋な発想から生まれたと言われています。
当時のこいのぼりは、和紙に鯉の絵を描いたものが主流で、今のように立体的なものではありませんでした。また、黒い真鯉(まごい)一匹だけを飾るのが一般的だったそうです。それが時代とともに、和紙から布(木綿や錦)へと素材が変わり、緋鯉(ひごい)や子鯉(こごい)が加わって、現在のような賑やかな姿へと変化していきました。
武家の風習から生まれ、庶民の知恵と遊び心によって育てられた、まさに日本の文化を象
徴するような存在。それがこいのぼりなのです。
こいのぼりの各部分の名称と意味
こいのぼりは、一番上のカラフルなものから、お父さん、お母さん、子どもたちと、家族を模していると言われています。それぞれの部分には、ちゃんとした名前と意味があるんですよ。一つずつ見ていきましょう。
一番上のヒラヒラ「吹き流し(ふきながし)」
こいのぼりの一番上で、五色の布がヒラヒラとなびいている部分を「吹き流し」と言います。これは、鯉が龍になって天に昇る様子を表しているとも言われますが、本来は魔除けの意味合いが強いものです。
この五色は、古代中国の「五行説(ごぎょうせつ)」に基づいています。五行説とは、万物は「木・火・土・金・水」の5つの元素から成り立つという思想です。この5つの元素を、それぞれ「青・赤・黄・白・黒(紫で代用することも)」の五色で表しています。
この五色には、あらゆる邪気を払い、神様のご加護を願うという意味が込められています。つまり、吹き流しは、悪いものが近寄ってこないように見張ってくれる、頼もしい魔除けのバリアーのような役割を果たしているのです。
一番大きい黒い鯉「真鯉(まごい)」
吹き流しのすぐ下に泳ぐ、一番大きくて黒い鯉が「真鯉」です。これは、一家の大黒柱であるお父さんを表しています。どっしりと大きく、家族を支える頼もしさを象徴しています。
赤い鯉「緋鯉(ひごい)」
真鯉の下を泳ぐ赤い鯉は「緋鯉」です。これは、生命力の象徴であり、優しく子どもを見守るお母さんを表しています。もともとこいのぼりは真鯉だけでしたが、明治時代から緋鯉が加わるようになりました。昭和に入ってからは、歌の歌詞の影響もあり、真鯉と緋鯉のセットが一般的になりました。
青や緑の鯉「子鯉(こごい)」
緋鯉の下には、青や緑、オレンジといったカラフルな鯉が続きます。これらは「子鯉」と呼ばれ、その家の子どもたちを表しています。男の子が生まれるたびに、一匹ずつ増やしていくという習慣もあります。最近では、女の子を表すピンクやオレンジの鯉など、色のバリエーションも豊かになっています。
てっぺんのキラキラ「矢車(やぐるま)」
ポールの先端で、カラカラと音を立てて回る車輪のような飾りが「矢車」です。矢は、魔を射るものとされ、古くから破魔矢(はまや)など縁起物として使われてきました。
この矢車には、家の中に悪いものが入ってこないように見張る「魔除け」の意味と、幸運を射止めるという願いが込められています。カラカラと鳴る音で、神様に「ここに子どもが生まれましたよ」とお知らせする役割もあると言われています。
矢車の下の丸い玉「竜球(りゅうきゅう)または天球(てんきゅう)」
矢車の下についている、宝珠のような形をした回転球を「竜球」または「天球」と呼びます。これは、天から降りてくる神様を家に招くための目印とされています。天の神様が迷わずお家に来られるように、キラキラと光って場所を知らせる役割があるのです。
こいのぼりの種類~どれが我が家に合う?~
いざ、こいのぼりを飾ろうと思っても、その種類は様々です。お家の環境やライフスタイルに合わせて、最適なものを選びたいですよね。ここでは、代表的なこいのぼりの種類を、飾り場所や素材ごとにご紹介します。それぞれの特徴を知って、ご家庭にぴったりのこいのぼりを見つける参考にしてください。
飾り場所による分類
こいのぼりは、大きく分けて「庭園用」「ベランダ用」「室内用」の3つのタイプがあります。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
庭園用こいのぼり
お庭に専用のポールを立てて飾る、最も本格的で伝統的なタイプのこいのぼりです。大きな鯉が青空を悠々と泳ぐ姿は圧巻で、道行く人の目も楽しませてくれます。
- メリット:なんといってもその雄大さ。大きなこいのぼりを飾ることができ、端午の節句を盛大にお祝いできます。近所の方々にもお子様の誕生をお披露目することができます。
- デメリット:設置には広いスペースと、ポールを建てるための基礎工事が必要になる場合があります。費用も比較的高価になる傾向があります。また、強風時には鯉を降ろすなどの管理が必要です。
庭園用には、地面に杭を打ち込んでポールを固定する「杭打ち式」や、地面に穴を掘ってコンクリートで固める本格的なものまで様々です。ポールの高さも数メートルから十数メートルに及ぶものまであり、鯉の大きさもそれに合わせて選びます。
ベランダ用こいのぼり
マンションやアパートなどの集合住宅にお住まいの方に人気のタイプです。ベランダのスペースに合わせて、コンパクトに飾ることができます。
- メリット:庭がなくても本格的なこいのぼりが楽しめます。設置や片付けが比較的簡単で、管理もしやすいのが特徴です。庭園用に比べて価格も手頃なものが多いです。
- デメリット:飾れる鯉の大きさに制限があります。また、マンションの規約によってはベランダへの設置が禁止されている場合もあるため、事前の確認が必要です。
ベランダ用には、おもりで固定する「スタンドタイプ」や、ベランダの格子(手すり)に金具で取り付ける「格子取り付けタイプ」などがあります。ご自宅のベランダの形状や規約に合わせて選ぶことが大切です。
室内用こいのぼり
天候を気にせず、お部屋の中で気軽に楽しめるタイプのこいのぼりです。飾る場所を選ばず、コンパクトなのでアパートなどでも安心です。
- メリット:天候や時間を気にせず、いつでもこいのぼりを眺めることができます。雨で汚れたり、風で傷んだりする心配がありません。飾り付けや片付けが非常に簡単です。兜飾りなど、他の五月人形と一緒に飾りやすいのも魅力です。
- デメリット:屋外で空に泳ぐ、本来の雄大さは味わえません。飾りの一つとしての側面が強くなります。
室内用には、天井から吊るす「モビールタイプ」、壁に掛ける「タペストリータイプ」、棚の上などに置く「置物タイプ」など、デザインも豊富です。木やちりめんなど、温かみのある素材で作られたものも多く、インテリアとしても楽しめます。
素材による分類
こいのぼりの素材は、主にナイロンとポリエステルの2種類が主流です。それぞれの素材に特徴があり、見た目や耐久性、価格が異なります。
ナイロン製
かつて主流だった素材で、現在でも多くのこいのぼりに使われています。軽くて扱いやすいのが特徴です。
- 特徴:生地が軽く、弱い風でも比較的よくなびきます。発色が良く、鮮やかな色合いが楽しめます。ポリエステル製に比べて、価格が手頃な傾向にあります。
- 注意点:太陽の紫外線に弱く、長期間屋外で飾っていると色褪せしやすいという側面があります。酸性雨などにもあまり強くありません。
ポリエステル製
現在、こいのぼりの主流となっている素材です。耐久性が高く、高級感のある見た目が特徴です。
- 特徴:ナイロンに比べて生地が厚く、丈夫で長持ちします。紫外線や酸性雨に強く、色褪せや変色がしにくいです。光沢があり、高級感のある風合いが魅力です。撥水加工が施されているものも多く、雨にも強いです。
- 注意点:ナイロン製に比べて生地が重いため、ある程度の風がないとなびきにくい場合があります。価格はナイロン製よりも高価になる傾向があります。
木綿製(伝統的なもの)
昔ながらの伝統的な素材です。友禅染などで染められた木綿のこいのぼりは、独特の風合いと温かみがあります。
- 特徴:化学繊維にはない、素朴で深みのある風合いが最大の魅力です。使い込むほどに味が出ます。
- 注意点:水を含むと非常に重くなり、乾きにくいです。色落ちや縮みも起こりやすく、取り扱いや保管には細心の注意が必要です。現在では高級品や特注品として作られることが多く、一般的に見かけることは少なくなりました。
このように、こいのぼりには様々な種類があります。ご自身の住環境、予算、そしてどのような飾り方をしたいかというイメージを膨らませながら、じっくり検討することが大切ですね。
こいのぼりの飾り方~いつからいつまで?安全に飾るには?~
さあ、いよいよこいのぼりを飾る段階です。でも、「いつから飾り始めるのが正解?」「どうやって立てればいいの?」など、疑問は尽きませんよね。ここでは、こいのぼりを飾る時期から、安全な設置方法、片付けるタイミングまでを詳しく解説します。
飾る時期としまう時期
こいのぼりを飾ったりしまったりする日に、厳密な決まりはありません。しかし、一般的に目安とされている時期があります。
いつから飾る?
こいのぼりを飾り始める時期としてよく言われるのが、春分の日(3月20日か21日頃)を過ぎてからです。春分の日を過ぎ、お彼岸が終わった頃から、4月の中旬くらいまでの、よく晴れた日に飾るのが一般的です。
「この日に飾らなければならない」というルールはないので、ご家庭の都合の良い、天気の良い日を選んで飾りましょう。あまりギリギリだと飾る期間が短くなってしまうので、4月に入ったら早めに準備を始めると良いかもしれませんね。
いつまで飾る?
こいのぼりは、端午の節句である5月5日を祝うための飾りです。そのため、基本的には5月5日が終わったら、その役目を終えます。
しまうタイミングとしては、5月5日の当日か、その翌日。遅くとも5月の中旬くらいまでの、よく晴れて空気が乾燥した日にしまうのがベストです。
なぜ「晴れた日」にこだわるかというと、雨や夜露で湿ったままこいのぼりを収納してしまうと、生地が傷んだり、カビが生えたりする原因になるからです。来年もきれいな状態で飾るために、しまう日のお天気はとても重要です。
地域によっては、旧暦の端午の節句(6月頃)まで飾る習慣がある場所もあります。お住まいの地域の風習に合わせて調整するのも良いでしょう。
庭園用こいのぼりの立て方(一般的な手順と注意点)
庭園用のこいのぼりを立てるのは、一大イベントです。安全に、そして格好良く立てるための手順と注意点を確認しておきましょう。作業は必ず大人2人以上で行い、安全には最大限配慮してください。
- 場所の選定と基礎の準備
まず、ポールを建てる場所を決めます。電線や木の枝、建物の屋根など、周囲に障害物がないかを必ず確認してください。特に電線は非常に危険です。安全な距離を十分に確保できる場所を選びましょう。ポールが倒れた場合を想定して、周囲に人や物がないかも確認が必要です。場所が決まったら、ポールの種類に合わせて基礎を設置します。杭を打ち込むタイプ、スタンドを組み立てるタイプ、地面に穴を掘ってセメントで固定するタイプなどがあります。説明書をよく読み、確実に行ってください。基礎が不安定だと、ポールごと倒れる危険があります。
- ポールの組み立て
ポールを地面に寝かせた状態で組み立てます。各パーツを順番に差し込み、抜けないようにしっかりと固定します。この時、ポールの先端に矢車と竜球を取り付けておきます。また、こいのぼりを引き上げるための滑車とロープも忘れずにセットします。
- こいのぼりの取り付け
組み立てたポールに、こいのぼりを取り付けていきます。取り付ける順番は、上から「吹き流し」「真鯉」「緋鯉」「子鯉」の順です。鯉の口についている金具(口金具)を、ロープに等間隔で結んでいきます。この時、鯉と鯉の間隔が近すぎると、風を受けたときにお互いが絡まってしまうので、鯉の長さと同じくらいの間隔をあけるのが目安です。ロープの結び方は、取扱説明書に記載されている方法で、解けないようにしっかりと結びましょう。
- ポールを立てる
いよいよポールを立てます。これは最も力と注意が必要な作業です。一人がポールの根元を支え、基礎にゆっくりとはめ込みます。もう一人はポールの先端を持ち、徐々に持ち上げていきます。ポールの長さと重さによっては、さらに多くの人手が必要になることもあります。ゆっくりと、周りの安全を確認しながら垂直に立ててください。基礎にポールがはまったら、ボルトなどでしっかりと固定します。
- 最終確認
ポールがまっすぐ、そして確実に固定されているかを確認します。ロープを操作して、こいのぼりがスムーズに上下するかをチェックします。これで、雄大なこいのぼりの完成です!
【最重要】安全のための注意点
- 強風の日は絶対に作業しない、飾らない。風が強い日に作業をすると、ポールが煽られて非常に危険です。また、すでに飾ってある場合でも、強風注意報などが出た際には、必ずこいのぼりを降ろしてください。ポールが破損したり、倒壊したりする原因になります。
- 雷が鳴っているときは絶対に触らない。ポールは金属製のものが多く、落雷の危険があります。天候が怪しいときは、作業を中断し、ポールに近づかないでください。
- 必ず大人複数人で作業する。一人での作業は絶対にやめましょう。重さや長さがあり、思わぬ事故につながります。
ベランダ用こいのぼりの設置方法
ベランダ用の設置は庭園用より手軽ですが、落下事故などを防ぐために、こちらも安全第一で進めましょう。
スタンドタイプの場合
スタンドタイプは、水袋などのおもりで固定するものが一般的です。平らで安定した場所にスタンドを設置し、説明書に従ってポールを組み立てます。水袋のおもりは、必ず規定の量を満たしてください。水が少ないと、少しの風で倒れてしまう危険があります。設置後は、スタンドがぐらつかないかをしっかりと確認しましょう。
格子取り付けタイプの場合
ベランダの格子(手すり)に専用の金具で固定するタイプです。まず、ご自宅のマンションやアパートの管理規約で、ベランダへのこいのぼり設置が許可されているかを必ず確認してください。金具は、説明書をよく読み、適合する格子の形状かを確認した上で、緩みなく確実に取り付けます。ネジが緩んでいると、風の力で落下する恐れがあり非常に危険です。定期的にネジの緩みがないかチェックすると、より安心です。
どちらのタイプも、こいのぼりが下の階や隣のベランダに迷惑をかけないか、位置をよく確認してから設置しましょう。
室内用こいのぼりの飾り方のアイデア
室内用こいのぼりは、自由な発想で楽しむことができます。兜飾りや鎧飾りの隣に置けば、一気に端午の節句のコーナーが華やかになります。壁に飾るタペストリータイプなら、場所を取らずに季節感を演出できます。天井から吊るすモビールタイプは、空調の穏やかな風でゆらゆらと揺れ、見ていて飽きません。リビングの窓辺に飾って、外の光に透ける姿を楽しむのも素敵ですね。
こいのぼりの選び方~後悔しないためのチェックポイント~
ここでは特定の商品をおすすめすることはしませんが、ご家庭に合ったこいのぼりを選ぶために知っておきたいポイントを解説します。一生に一度の贈り物になるかもしれないからこそ、じっくり考えて選びたいものですね。
誰が買うのが一般的なの?
「こいのぼりって、誰が買うもの?」という疑問もよく聞かれます。昔からの慣習では、母方の実家(お嫁さんの実家)から贈るのが一般的とされてきました。これは、昔の結婚が「嫁入り」という形で、女性が男性の家に入るという考え方が強かったためです。お嫁さんの実家が「お孫さんの誕生を祝い、立派に育つように」との願いを込めて、節句飾りを贈ることで、両家の縁を深めるという意味合いがありました。
しかし、これはあくまで昔からの慣習です。現代では、家族の形も多様化しています。
- 両家で費用を出し合って購入する
- 父方の実家が購入する
- 子どもの両親(自分たち)が気に入ったものを購入する
など、様々なケースがあります。誰が買うかに厳格なルールはありません。一番大切なのは、みんなで赤ちゃんの誕生を喜び、健やかな成長を願う気持ちです。両家でよく話し合って、みんなが納得する形で用意するのが一番良い方法と言えるでしょう。
選ぶ際のチェックポイント
こいのぼり選びで失敗しないために、購入前に確認しておきたいポイントをまとめました。
- 飾る場所の広さを正確に測る
これが最も重要な第一歩です。庭園用を考えているなら、庭の広さはもちろん、ポールを立てる場所から電線や家までの距離を正確に測りましょう。ベランダ用なら、ベランダの幅、奥行き、天井までの高さ、そして手すりの格子の幅や厚みなどを細かく採寸します。「これくらいだろう」という曖昧な感覚ではなく、メジャーを使って具体的な数字を把握しておくことが、後々の「大きすぎて飾れなかった!」という失敗を防ぎます。
- 鯉のぼりのサイズを考える
飾る場所の広さがわかったら、それに合ったサイズのこいのぼりを選びます。庭園用の場合、ポールの高さと鯉の大きさにはバランスがあります。一般的に、一番大きい真鯉の長さは、ポールの高さの4分の1から5分の1程度が美しく見えるとされています。例えば、8mのポールなら、真鯉は2mか1.5mといった具合です。ベランダ用も同様に、スペースに合った無理のないサイズを選びましょう。
- 素材の特徴を理解する
前の章で解説した、ナイロン製とポリエステル製の違いを思い出してください。軽さや価格の手頃さを重視するならナイロン製、耐久性や高級感を重視するならポリエステル製、というように、ご自身が何を優先したいかを考えましょう。撥水加工や防汚加工が施されているかなども、長くきれいに使うためのチェックポイントです。
- デザインや色合いの好み
こいのぼりは、伝統的な和風のデザインから、現代の住宅にも合うようなモダンで可愛らしいデザインまで様々です。金箔が豪華にあしらわれたもの、友禅染の技法で繊細に描かれたもの、パステルカラーのものなど、多種多様なデザインが存在します。家族みんなが気に入る、愛着の持てるデザインを選びましょう。
- セット内容をしっかり確認する
「こいのぼりセット」として販売されているものでも、その内容は様々です。鯉と吹き流しだけのものもあれば、ポール、矢車、ロープなど、飾るために必要なものが全て含まれているものもあります。特に庭園用の場合、ポールやそれを立てるための杭などが別売りになっていないか、しっかりと確認することが重要です。「鯉だけ買ってしまったけど、ポールがなかった!」なんてことにならないように、セット内容の一覧を隅々までチェックしましょう。
次男、三男が生まれたらどうする?
長男の誕生で立派なこいのぼりを飾った後、次男や三男が生まれた場合、どうすれば良いのでしょうか。これにもいくつかの考え方があります。
- 子鯉(こごい)を買い足す
最も一般的なのが、新しく生まれた子のために、青や緑、紫などの子鯉を一番下に買い足す方法です。兄弟の数だけ鯉が増えていくのは、とても賑やかで喜ばしいですね。最初に購入したお店に相談すると、同じシリーズの子鯉を用意してもらえることが多いです。
- 兄弟で一つのこいのぼりを共有する
こいのぼりは、特定の誰か一人のためではなく、「その家に生まれた男の子たち」全員の成長を願うもの、という考え方です。この場合、鯉を買い足さずに、兄弟みんなの守り神として同じこいのぼりを飾ります。長男の時に飾ったこいのぼりが、弟たちのことも見守ってくれる、という素敵な考え方ですね。
- 吹き流しを新しくする
家紋や名前を入れることができる吹き流しの場合、兄弟の名前を連名で入れたり、新しい吹き流しを用意したりすることもあります。
これも「こうでなければならない」という決まりはありません。ご家庭の方針や、飾るスペース、予算などを考慮して、家族で話し合って決めるのが一番です。
女の子にこいのぼりはダメ?
こいのぼりは、もともと男の子の節句である端午の節句の飾りです。しかし、近年ではその考え方も少しずつ変化しています。
結論から言うと、女の子のためにこいのぼりを飾っても全く問題ありません。
「鯉が滝を登る」という立身出世の願いは、性別に関係なく、すべての子どもに向けられるべき素晴らしい願いです。最近では、女の子向けにピンクやパステルカラーを基調とした可愛らしいデザインのこいのぼりもたくさん作られています。
「男の子の節句だから」「女の子の節句だから」と厳密に分けるのではなく、家族みんなのイベントとして、子どもたちの健やかな成長を願う。そんな気持ちでこいのぼりを飾るご家庭がとても増えています。伝統を大切にしつつも、現代の価値観に合わせて柔軟に楽しむことができるのも、こいのぼりの魅力の一つと言えるでしょう。
こいのぼりの手入れと保管方法~来年もきれいに飾るために~
高価なものであることも多いこいのぼり。一度きりではなく、何年も、何十年も大切に飾りたいですよね。そのためには、シーズンオフの正しい手入れと保管が非常に重要になります。ここでは、こいのぼりを長持ちさせるための秘訣をご紹介します。
長持ちさせるための秘訣
ポイントは、「しまう前のひと手間」と「保管場所」です。
しまう前の手入れ:乾燥が命!
こいのぼりをしまう作業は、必ずよく晴れて、空気が乾燥している日の日中に行いましょう。これが最大のポイントです。
- ホコリや汚れを落とす
まず、こいのぼりの表面についたホコリや砂、小さなゴミなどを、柔らかい布やハタキで優しく払い落とします。ゴシゴシこすると生地や金箔が傷む原因になるので、あくまで優しく、が基本です。
- 汚れが気になる場合
もし、鳥のフンなどで部分的に汚れてしまった場合は、その部分だけを濡らしたタオルで軽く叩くようにして拭き取ります。それでも落ちない頑固な汚れがある場合は、洗濯も可能ですが、細心の注意が必要です。洗面器などにぬるま湯を張り、おしゃれ着洗い用の中性洗剤を少量溶かします。その中で、優しく押し洗いするように汚れを落とします。絶対に洗濯機で洗ったり、強くもみ洗いしたりしないでください。金箔や特殊な加工が施されているものは、水洗い自体が適さない場合もあります。購入したお店に確認するのが最も確実です。
- しっかりと陰干しする
洗い終わったら、絶対に絞らずに、タオルで優しく水気を吸い取ります。その後、風通しの良い日陰で、完全に乾くまでじっくりと干します。直射日光は色褪せの原因になるので、必ず陰干しにしてください。湿気が残っているとカビの温床になるため、「もう乾いたかな?」と思ってから、さらに半日干すくらいの気持ちで、完全に乾燥させることが何よりも重要です。
上手な保管方法:湿気と虫から守る
完全に乾いたこいのぼりを、いよいよ収納します。
- 丁寧にたたむ
鯉を一枚ずつ丁寧にたたみます。あまり細かく折りたたむと、折りジワが強くついてしまうので、なるべくふんわりと、大きな折り目でたたむのがコツです。金箔などが施されている部分は、直接こすれ合わないように、間に和紙や柔らかい布を挟むとより丁寧です。
- 通気性の良い容器に入れる
購入時に入っていた専用の箱があれば、それに戻すのが一番です。箱がない場合は、通気性の良い布製の袋や、桐の箱などに入れるのが理想です。ビニール袋など、通気性の悪いものに入れてしまうと、湿気がこもってカビの原因になるので避けましょう。
- 防虫剤を忘れずに
収納する際には、衣類用の防虫剤を一緒に入れましょう。ただし、防虫剤が直接こいのぼりの生地に触れると、化学反応で変色してしまう可能性があります。ティッシュペーパーや和紙などで包んでから、箱の隅に入れるようにしてください。
- 最適な保管場所
保管場所は、湿気が少なく、風通しの良い、直射日光が当たらない場所が最適です。押し入れやクローゼットであれば、なるべく天袋に近い上段が良いでしょう。床に近い場所は湿気が溜まりやすいので避けた方が無難です。
ポールや矢車のメンテナンス
鯉だけでなく、ポールや矢車などの金属部品もメンテナンスしておきましょう。乾いた布で汚れや水分をきれいに拭き取ります。可動部分には、必要に応じて潤滑油を少量さしておくと、来年もスムーズに動きます。ネジなどの細かい部品は、紛失しないように小さな袋にまとめて、ポールと一緒に保管しておくと安心です。こうして一手間かけてあげることで、大切なこいのぼりは来年も美しい姿で空を泳いでくれます。
こいのぼりにまつわる豆知識・雑学
こいのぼりの世界は、まだまだ奥が深い!ここでは、知っているとちょっと自慢できる、こいのぼりにまつわる豆知識や雑学をご紹介します。お祝いの席での会話のタネにもなりますよ。
全国各地のユニークなこいのぼりイベント
毎年4月から5月にかけて、日本全国でこいのぼりに関する壮大なイベントが開催されます。その中でも特に有名なものをいくつかご紹介します。
- 群馬県館林市「こいのぼりの里まつり」
掲揚されるこいのぼりの数がギネス世界記録に認定されたこともある、日本を代表するこいのぼり祭りです。鶴生田川(つるうだがわ)を中心に、市内の複数か所で数千匹ものこいのぼりが一斉に空を泳ぐ姿は、まさに圧巻の一言。色とりどりの鯉が川の上を埋め尽くす光景は、一度は見ておきたい絶景です。
- 高知県四万十川「こいのぼりの川渡し」
「日本最後の清流」とも呼ばれる四万十川の風物詩です。川の両岸にロープを渡し、約500匹のこいのぼりを泳がせるイベントです。川面を渡る風を受けて、まるで本物の鯉が川を渡っているかのように見えるのが特徴。青い空、緑の山々、そして清流とこいのぼりのコントラストが非常に美しいです。
- 埼玉県加須市「加須市民平和祭」
加須市は、こいのぼりの生産で有名な街です。このお祭りの目玉は、なんといっても全長100メートルを超える「ジャンボこいのぼり」。クレーン車を使って空に揚げるその姿は、迫力満点です。毎年多くの観光客で賑わいます。
- 熊本県阿蘇郡小国町「杖立温泉こいのぼり祭り」
温泉街の杖立川の上空を、約3,500匹のこいのぼりが泳ぐ、歴史あるイベントです。昭和56年から続いているこのお祭りは、全国の「こいのぼり祭り」の発祥とも言われています。温泉の湯けむりの中を泳ぐこいのぼりは、幻想的で風情があります。
これらのイベントは、地域振興の目的もありますが、たくさんのこいのぼりが集まることで、多くの子どもたちの健やかな成長を願う、大きな祈りの場にもなっています。
こいのぼりの歌、実は2つある?
「♪やねよりたかい こいのぼり~」という歌は、誰もが知っていますよね。この有名な歌、実は正式な題名を『こいのぼり』と言います。作詞者は不詳で、作曲は弘田龍太郎による文部省唱歌です。
しかし、「こいのぼり」と題された歌は、もう一つ存在します。それは、「♪いらかのなみと くものなみ~」で始まる歌です。こちらの作詞は近藤宮子、作曲は不明で、こちらも文部省唱歌です。
「甍(いらか)」とは、屋根の瓦のことです。つまり、「瓦屋根が波のように連なっている様子と、空の雲が波のように見える様子。その二つの波の間を、立派な鯉のぼりが泳いでいる」という、非常に情景豊かな歌詞なのです。
どちらも同じ『こいのぼり』という題名ですが、歌詞の内容や雰囲気が異なります。機会があれば、二つの歌を聴き比べてみるのも面白いかもしれませんね。
こいのぼりと五月人形、どちらを飾るべき?
端午の節句の飾りには、こいのぼりの他に、兜(かぶと)や鎧(よろい)といった「五月人形」があります。「両方飾るべき?」「どちらか一つでもいいの?」と悩む方もいるでしょう。
もともと、こいのぼりは家の外に飾る「外飾り」、五月人形は家の中に飾る「内飾り」とされ、それぞれに役割が異なると言われています。
- こいのぼり(外飾り):天の神様に「ここに男の子が生まれました」とお知らせし、立身出世を願うための飾り。
- 五月人形(内飾り):武士の象徴である鎧や兜を飾ることで、男の子に降りかかる災いや病気を引き受けてもらう「お守り・身代わり」としての意味を持つ飾り。
つまり、「外飾り」で出世を祈り、「内飾り」で厄除けを願うという、二重の守りで子どもを守るという意味合いがあるのです。そのため、本来は両方飾るのが最も丁寧な祝い方とされています。
しかし、現代の住宅事情やライフスタイルでは、両方を飾るのが難しい場合も多いでしょう。その場合は、どちらか一方でも全く問題ありません。お祝いする気持ちが何よりも大切です。ご家庭の状況に合わせて、無理のない範囲でお祝いするのが一番です。
役目を終えたこいのぼり、どうすればいい?
子どもが大きくなり、もう飾らなくなったこいのぼり。思い出が詰まっているだけに、どう処分すれば良いか悩みますよね。いくつかの方法があります。
- 神社やお寺で供養してもらう
最も丁寧な方法が、神社やお寺で行われる「人形供養」や「お焚き上げ」で供養してもらうことです。お守りやお札と同じように、感謝の気持ちを込めてお納めします。全ての神社仏閣で受け付けているわけではないので、事前に問い合わせてみましょう。
- 地域のイベントで処分する
地域によっては、小正月の「どんど焼き」などで、正月飾りと一緒にこいのぼりも受け付けてくれる場合があります。こちらも、お住まいの自治体や町内会にご確認ください。
- 感謝を込めて自分で処分する
供養に出すのが難しい場合は、ご自身で清めてから処分する方法もあります。まず、こいのぼりを綺麗な布の上に広げ、ひとつまみの塩を振って清めます。「今までありがとう」と感謝の気持ちを伝え、他のゴミとは別の袋に入れて、自治体のルールに従ってゴミとして出します。金属のポールや矢車は、分別ルールをしっかり守りましょう。
- リメイクや再利用する
生地が丈夫なこいのぼりは、リメイクの素材としても活用できます。エコバッグやポーチ、子どもの遊び着などに作り替えるのも素敵なアイデアです。形を変えて、思い出をそばに置いておくことができますね。
いずれの方法を選ぶにしても、長年子どもたちの成長を見守ってくれたことへの感謝の気持ちを忘れないことが大切です。
まとめ
ここまで、こいのぼりの由来から歴史、種類、飾り方、そして知って得する豆知識まで、本当にたくさんの情報をお届けしてきました。もしかしたら、今まで何気なく見上げていた空の鯉たちが、少し違って見えるようになったのではないでしょうか。
こいのぼりは、単なる季節の風物詩ではありません。それは、「登竜門」の故事に込められた立身出世への願いであり、わが子の無病息災を祈る親の深い愛情の象徴です。そして、武家社会から生まれ、庶民の知恵で育まれてきた、日本の素晴らしい伝統文化そのものです。
この記事には、特定の商品情報や宣伝は一切ありません。ただ純粋に、こいのぼりという文化の奥深さと魅力を知っていただきたい、という思いだけで綴りました。
吹き流しの五色に込められた魔除けの意味、真鯉と緋鯉が象徴する家族の姿、矢車や竜球が神様を招くための目印であること。一つ一つの意味を知ることで、こいのぼりを飾る行為そのものが、より一層尊く、楽しいものになるはずです。
また、安全な飾り方や、来年も美しく飾るための手入れ・保管方法は、大切なこいのぼりを長く愛用するために欠かせない知識です。ぜひ、この記事を参考にして実践してみてください。
今年の端午の節句は、ぜひご家族でこいのぼりを見上げながら、「あの黒い鯉はお父さんなんだって」「一番上のヒラヒラは、悪いものから守ってくれるお守りなんだよ」なんて、お話をしてみてはいかがでしょうか。きっと、いつもより心温まる、素敵な一日になることでしょう。
この記事が、皆さまとこいのぼりの素晴らしい関係を築く、ささやかな一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

