女の子の健やかな成長を願う、日本の美しい伝統文化「ひな祭り」。その主役である雛人形は、見ているだけで心が和む、とても素敵なものですよね。でも、いざ自分の娘のために用意するとなると、「いつ買うの?」「誰が買うの?」「どんな種類があるの?」「どうやって飾るのが正解?」など、たくさんの疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
この記事では、そんな雛人形に関するあらゆる疑問を解消するため、特定の商品の宣伝を一切行わず、純粋なお役立ち情報だけをぎゅっと詰め込みました。雛人形の歴史や意味といった基礎知識から、種類、選び方のポイント、正しい飾り方、そして気になる片付け方や供養の方法まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、雛人形に関する知識が深まり、自信を持って桃の節句を迎えられるはずです。ぜひ、お子様の大切な初節句の準備にお役立てください。
雛人形の基礎知識を深めよう
まずは、雛人形がどのようなものなのか、その歴史や意味について知ることから始めましょう。背景を知ることで、雛人形への愛着がより一層深まりますよ。
雛人形の奥深い歴史
雛人形のルーツは、今から1000年以上も昔の平安時代にまで遡ります。当時の貴族の女の子たちの間で流行していた「ひいな遊び」という、紙などで作った人形を使ったおままごとのような遊びが、雛人形の原型になったと言われています。
また、それとは別に、古代中国から伝わった「上巳(じょうし)の節句」という風習も関係しています。これは、3月の最初の巳(み)の日に、水辺で身を清めて厄を払うという行事でした。この風習が日本に伝わり、草や紙で作った人形(ひとがた)に自分の穢れを移して川に流す「流し雛」として定着しました。この「身代わり」として厄を引き受けてもらうという考え方が、現在の雛人形の「お守り」としての役割に繋がっています。
時代が下り、江戸時代になると、人形作りの技術が大きく発展しました。それまでの簡素な立ち雛から、豪華な衣装をまとった座り雛が登場し、観賞用として飾られるようになります。特に武家社会の女性たちの間で、雛人形は嫁入り道具の一つとして重要視されるようになりました。そして、庶民の間にもひな祭りの風習が広まり、女の子の誕生を祝い、その子の健やかな成長と幸せを願って雛人形を飾るという、現在と同じような形が定着していったのです。
このように、雛人形は単なる飾り物ではなく、おままごと遊びの人形と、厄払いの身代わり人形という二つのルーツが融合し、長い年月をかけて発展してきた、日本の歴史と文化の結晶なのです。
雛人形を飾る本当の意味
ひな祭りに雛人形を飾る最大の意味は、女の子の健やかな成長と幸せを願うことにあります。雛人形は、生まれてきた女の子の災厄を代わりに引き受けてくれる「お守り」の役割を持っていると考えられています。
昔は、今のように医療が発達していなかったため、子どもが無事に成長することは決して当たり前のことではありませんでした。そのため、親は子どもの無病息災を神様に強く願いました。雛人形は、そんな親の切なる祈りが込められた、愛の象徴なのです。
また、雛人形は宮中の結婚式を模していると言われています。きらびやかな衣装をまとったお内裏様とお雛様のように、娘が将来素敵な人と結ばれ、幸せな人生を送れるように、という願いも込められています。美しく豪華な雛飾りは、女の子にとっての憧れであり、豊かな情操を育むきっかけにもなるでしょう。
ですから、雛人形は「一人にひとつ」が基本とされています。姉妹で共有するのではなく、それぞれのお守りとして用意してあげるのが理想的とされているのは、この「身代わり」という意味合いが強いからです。もちろん、ご家庭の事情や考え方もありますので、必ずしもそうでなければならないわけではありませんが、こうした背景を知っておくと良いでしょう。
「桃の節句」ひな祭りの由来
ひな祭りは、正式には「上巳の節句」と言い、3月3日に行われます。なぜこの日が「桃の節句」と呼ばれるようになったのでしょうか。
これにはいくつかの説があります。一つは、旧暦の3月3日の頃に桃の花が咲く季節であったため、というシンプルな理由です。桃の花が美しい季節に、女の子の節句を行うのは自然なことですよね。
もう一つは、桃の木が持つ力に由来するという説です。古代中国では、桃は邪気を払い、不老長寿を与える仙木(せんぼく)として神聖視されていました。日本でも、古事記に登場するイザナギノミコトが、桃を投げて鬼を追い払ったという神話があるように、桃には魔除けの力があると信じられてきました。そのため、邪気を払う上巳の節句に、同じく魔除けの力を持つ桃の花を飾るようになったと言われています。
ひな祭りに食べる菱餅の緑、白、ピンクの3色も、それぞれ健康や清浄、魔除けといった意味が込められており、桃の花の色とも関連付けられています。このように、ひな祭りの行事には、女の子の健康と幸せを願う様々な意味が重ねられているのです。
知っておきたい!雛人形の様々な種類
一口に雛人形と言っても、その種類は本当に様々です。飾り方による分類や、お人形の作り方の違いなど、基本的な種類を知っておくことで、ご家庭に合った雛人形を見つけやすくなります。
飾り方の種類で見る雛人形
雛人形は、飾り方の規模や形態によっていくつかの種類に分けられます。それぞれに特徴やメリットがありますので、飾るスペースや収納場所、ご予算などを考えながら、どのタイプが合っているか検討してみましょう。
七段飾り
最も豪華で伝統的な形式が「七段飾り」です。緋色の毛氈(もうせん)を敷いた七段の飾り段に、親王(男雛・女雛)をはじめ、三人官女、五人囃子、随身、仕丁といった15人のお人形と、様々な嫁入り道具を飾ります。その豪華絢爛な姿は圧巻で、ひな祭りを盛大にお祝いしたいご家庭にぴったりです。お人形や道具の一つひとつに意味があり、お子様と一緒に飾りながら日本の伝統文化を伝えることができるのも魅力です。ただし、設置には広いスペースが必要で、飾り付けや片付けにも時間と手間がかかるという側面もあります。
三段飾り
七段飾りをコンパクトにしたものが「三段飾り」です。一般的には、一段目に親王、二段目に三人官女、三段目に嫁入り道具やお囃子人形の一部を飾る形式が多いようです。七段飾りほどの場所は取らず、それでいて華やかさもあるため、マンションなどでも飾りやすい人気のスタイルです。最近では、お人形の組み合わせが自由なものや、モダンなデザインのものも増えています。
親王飾り(平飾り)
男雛と女雛の一対(親王)だけをシンプルに飾るのが「親王飾り」です。平たい台の上に飾ることから「平飾り」とも呼ばれます。省スペースで飾ることができ、飾り付けや片付けも簡単なのが最大のメリットです。デザインも豊富で、伝統的なものからモダンでスタイリッシュなものまで様々なタイプがあります。コンパクトながらも、お人形やお道具の質にこだわった高級なものも多く、シンプルだからこそ上質さが際立ちます。
収納飾り
飾り台がそのまま収納箱になる、非常に機能的なタイプが「収納飾り」です。飾り付けが終わったら、お人形や道具類をすべて飾り台の中にしまうことができます。オフシーズンの収納場所に困らないため、特に収納スペースが限られているご家庭に人気です。三段飾りの収納タイプや、親王飾りの収納タイプなどがあります。飾り付けや片付けの手間を少しでも減らしたいという方にもおすすめです。
ケース飾り
お人形や道具がガラスやアクリル製のケースに固定されているのが「ケース飾り」です。箱から出して置くだけで飾ることができる手軽さが魅力です。お人形に直接ホコリや汚れが付く心配がないため、お手入れが非常に簡単です。小さなお子様やペットがいるご家庭でも、安心して飾ることができます。ただし、ケースに入っている分、オフシーズンの収納時にはかさばることもあります。
作り方で見る雛人形
雛人形は、その作り方によって大きく「衣裳着人形(いしょうぎにんぎょう)」と「木目込み人形(きめこみにんぎょう)」の二つに分けられます。見た目の雰囲気や特徴が大きく異なるので、どちらが好みか考えてみるのも良いでしょう。
衣裳着人形
「衣裳着人形」は、人間の着物と同じように、裁断して縫い合わせた衣装を、藁や木などでできた胴体に着せ付けて作られます。手足や頭を後から取り付けるため、人間らしい自然な造形で、写実的な美しさがあります。豪華な十二単(じゅうにひとえ)の重ねの美しさや、衣装の優雅な広がりが魅力で、一般的に「雛人形」と聞いて多くの人がイメージするのがこのタイプかもしれません。華やかで写実的な美しさを好む方におすすめです。様々な職人の技術が集結して一体の人形が作られます。
木目込み人形
「木目込み人形」は、桐塑(とうそ)と呼ばれる桐の粉を固めたボディに筋彫りを入れ、その溝(木目)に直接布地を埋め込んで(木目込んで)衣装を表現する人形です。衣裳着人形に比べて、丸みを帯びた小ぶりで愛らしいフォルムが特徴です。衣装が型崩れしにくく、扱いやすいのもメリットの一つです。その名の通り、江戸時代に京都の上賀茂神社で作られたのが始まりとされ、伝統的な技法が受け継がれています。素朴で愛らしい雰囲気や、独創的なデザインを好む方に人気があります。
雛人形のお人形と役割
段飾りにはたくさんのお人形が並びますが、それぞれに役割や身分があります。ここでは、代表的なお人形について解説します。
親王(男雛・女雛)
雛飾りの主役で、天皇陛下と皇后陛下をモデルにしています。一番上の段に飾られ、それぞれ男雛(おびな)、女雛(めびな)と呼ばれます。男雛は手に笏(しゃく)を、女雛は檜扇(ひおうぎ)を持っています。この二人が幸せな結婚式の主役であり、女の子の理想の姿を象徴しています。
三人官女(さんにんかんじょ)
親王のお世話をする女官たちで、二段目に飾られます。向かって右から、長柄(ながえ)の銚子、三方(さんぽう)、加(くわえ)の銚子を持っています。真ん中の官女だけ眉がなく、お歯黒をしていることがありますが、これは既婚者を表していると言われています。未婚の女性に作法を教えるリーダー的な役割だったのかもしれませんね。
五人囃子(ごにんばやし)
能のお囃子を演奏する5人の少年音楽隊で、三段目に飾られます。向かって右から、謡(うたい)、笛(ふえ)、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)の順に並びます。彼らの楽しげな演奏が、結婚式を賑やかに盛り上げています。よく見ると、太鼓の担当だけ年長で、他の4人はまだ若い少年です。
随身(ずいしん)
お内裏様を護衛する武官で、四段目に飾られます。一般的に、向かって右が若者(左大臣)、左が年配者(右大臣)です。飾り段から見て左側にいるので左大臣、右側にいるので右大臣ですが、位は左大臣の方が上です。弓矢や太刀を携え、凛々しい姿をしています。
仕丁(しちょう・じちょう)
雑用係の三人組で、五段目に飾られます。台笠(だいがさ)、沓台(くつだい)、立傘(たてがさ)を持っています。彼らは喜んだり、怒ったり、泣いたりと表情豊かなのが特徴で、「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれます。宮中の仕事の合間に、お酒を飲んで盛り上がっている様子を表していると言われ、親しみやすい存在です。
後悔しないための雛人形の選び方
ここからは、いざ雛人形を選ぶとなった時に、どのようなことを考え、どんなポイントを重視すればよいのかを解説します。特定の商品をおすすめするのではなく、あくまで「選び方の考え方」に焦点を当ててご紹介します。
誰が買う?昔と今の考え方
「雛人形は母方の実家が贈るもの」という話を耳にしたことがあるかもしれません。これは昔からの慣習の一つです。
昔は、嫁入りした女性が実家に帰る機会はあまりありませんでした。そのため、節句などの行事を口実に、孫の顔を見せに里帰りできるように、という母方の実家の親心から、雛人形や五月人形を贈る習慣が生まれたと言われています。また、嫁入り道具の一つとして、雛人形を持参することもあったようです。
しかし、現代では家族の形も多様化しています。誰が買うべきかという決まりは全くありません。 母方の実家が贈るケースもあれば、父方の実家が贈るケース、両家で費用を出し合って購入するケース、そしてもちろん、赤ちゃんの両親(パパとママ)が自分たちで選んで購入するケースも増えています。
大切なのは、誰が買うかということよりも、関係者みんなで赤ちゃんの誕生を祝い、健やかな成長を願う気持ちです。購入する前には、両家のご両親ともよく相談し、誰がどのように準備するのか、揉め事にならないように話し合っておくとスムーズでしょう。感謝の気持ちを忘れずに、みんなが納得できる形を選ぶのが一番です。
いつ買うのがベスト?購入時期の目安
雛人形をいつ買うかについても、特に決まりはありません。しかし、一般的には、初節句(生まれて初めて迎える3月3日)に間に合うように準備するのが良いとされています。
雛人形は、節分の翌日(立春、2月4日頃)から飾り始めるのが良いとされているため、それまでに手元にあるのが理想です。お店には、早いところでは11月頃から雛人形が並び始め、1月〜2月上旬が品揃えのピークとなります。人気のあるものや、職人による手作りの一点ものなどは、早い時期に品切れになってしまうことも考えられます。
そのため、年末年始あたりから探し始め、遅くとも1月中には検討を終え、2月上旬までには購入するのがおすすめです。焦って選ぶことのないよう、時間に余裕を持って、じっくりと情報収集や下見をすると良いでしょう。もし、赤ちゃんの誕生日が2月や3月上旬で、初節句までの準備期間が短い場合は、無理にその年に用意せず、翌年にゆっくり選んであげるという考え方もあります。
失敗しないための選び方のポイント
たくさんの種類がある中から、たった一つを選ぶのは大変な作業です。ここでは、選ぶ際に考えておきたい5つのポイントをご紹介します。
ポイント1:飾る場所とサイズを考える
まず最初に考えるべきは、「どこに飾るか」そして「どのくらいのサイズなら置けるか」です。豪華な七段飾りに憧れても、実際に飾るスペースがなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
- 飾る場所を決める:リビング、和室、玄関など、雛人形を飾る具体的な場所を決めましょう。
- 寸法を測る:その場所の間口(幅)・奥行・高さを正確にメジャーで測ります。特に、奥行は見落としがちなので注意が必要です。
- 収納場所も考える:同様に、オフシーズンにしまっておく収納スペースの寸法も測っておきましょう。飾り台と収納箱が別々の場合は、両方のサイズを確認することが大切です。
この寸法をメモしてお店に行けば、サイズで悩むことが減り、スムーズに検討できます。飾った時に圧迫感がないか、人の動線の邪魔にならないかもイメージしておくと良いでしょう。
ポイント2:一番大切な「お顔」の好み
雛人形は、お子様の成長を何年、何十年と見守ってくれる存在です。だからこそ、見ていて心が安らぐ、愛着の持てるお顔を選ぶことが非常に重要です。
- どんな表情が好きか:優しく微笑んだお顔、気品のある切れ長の目のお顔、ふっくらとした赤ちゃんのような愛らしいお顔など、人形師によって表情は様々です。
- パパ・ママの好みで:「このお顔が好きだな」「この表情、なんだか落ち着くな」と感じる直感を大切にしましょう。お子様が大きくなった時に「このお雛様、大好き!」と言ってくれるような、家族みんなが気に入るお顔を見つけてください。
- 左右や斜めからも見てみる:正面からだけでなく、少し角度を変えて見てみると、また違った表情に見えることもあります。様々な角度からじっくりと眺めてみましょう。
お顔は雛人形の「命」とも言われる部分です。流行り廃りではなく、長く愛せるかどうかという視点で選ぶことをおすすめします。
ポイント3:衣装の色柄やデザイン
お顔の次に印象を左右するのが、お人形がまとっている衣装です。伝統的な色合いからモダンなデザインまで、非常にバリエーションが豊かです。
- 色の好み:赤やピンクを基調とした華やかなもの、紫や黒を基調としたシックで高貴なもの、淡いパステルカラーでまとめた優しい雰囲気のものなどがあります。お部屋のインテリアとの相性を考えて選ぶのも一つの方法です。
- 柄の意味:衣装の柄には、縁起の良い「吉祥文様」が描かれていることが多くあります。例えば、長寿を意味する「鶴亀」、子孫繁栄を表す「桐竹鳳凰」、成長を願う「麻の葉」などです。そうした柄の意味を知って選ぶのも楽しいですね。
- 全体の調和:お人形だけでなく、屏風や飾り台、お道具類との全体の色のバランスも見てみましょう。統一感のあるものはまとまって見えますし、あえて差し色を使っているおしゃれなものもあります。
ポイント4:予算の考え方
雛人形の価格は、本当に幅広いです。あらかじめ、大体の予算を決めておくと、選択肢が絞りやすくなります。
価格の違いは、主に以下のような要素で決まってきます。
- 人形の人数:七段飾りのように人数が多ければ高価になり、親王飾りのように少なければ価格は抑えめになる傾向があります。
- 人形の大きさ:一般的に、人形が大きくなるほど高価になります。
- 職人の技術:有名な作家や伝統工芸士が手掛けたもの、手作業の工程が多いものほど高価になります。衣装の生地(正絹など)や、お道具の素材(木製、漆塗りなど)によっても価格は変わります。
- 飾り台や屏風の素材:無垢材を使っているか、蒔絵などの装飾が施されているかなども価格に影響します。
単純に「高いから良い」「安いから悪い」ということではありません。ご予算の中で、最も納得のいく、気に入ったものを選ぶことが大切です。無理のない範囲で、愛情を込めて選んであげましょう。
ポイント5:素材や作りの違いを知る
少し専門的になりますが、使われている素材や作りの違いにも目を向けてみると、より深く雛人形を理解できます。
- 人形の胴体:衣裳着人形の胴体は、昔ながらの藁でできた「わら胴」や、桐の粉を固めた「桐塑(とうそ)胴」などがあります。木目込み人形も桐塑で作られます。
- 衣装の素材:最高級とされるのは正絹(シルク)です。美しい光沢と、しなやかな風合いが特徴です。京都の西陣織などが有名です。その他、ポリエステルなどの化学繊維を使ったものもあり、こちらは比較的リーズナブルで、耐久性に優れているという利点があります。
- お道具の素材:木製のお道具は温かみがあり、高級感があります。プラスチックなどの樹脂製のものは、軽くて扱いやすいのが特徴です。
お店で実際に見て触れる機会があれば、こうした素材の違いも確認してみると良いでしょう。もちろん、オンラインで選ぶ場合でも、商品説明をよく読んで、どのような素材や技法で作られているのかをチェックすることをおすすめします。
これで完璧!雛人形の飾り方
素敵な雛人形が手に入ったら、いよいよ飾り付けです。飾る時期や場所、正しい並べ方など、知っておきたいポイントを押さえて、ひな祭りを迎えましょう。
いつからいつまで飾る?飾る時期について
雛人形を飾る時期に厳密な決まりはありませんが、一般的には以下の期間が目安とされています。
- 飾る時期:二十四節気の「雨水(うすい)」(2月19日頃)から飾ると良縁に恵まれる、という言い伝えがあります。また、節分で豆まきをして鬼(邪気)を払った後、立春(2月4日頃)から飾り始めるのも良いとされています。遅くとも、ひな祭りの1週間前までには飾り終えたいところです。
- 避けた方が良い日:「一夜飾り」と言って、ひな祭りの前日である3月2日に慌てて飾るのは避けた方が良いとされています。これは、お祝いの気持ちがこもっていないように感じられるためです。余裕を持って飾り付けをしましょう。
- 飾っておく期間:3月3日のひな祭りが終わったら、できるだけ早く片付けるのが良いとされています。長く出しっぱなしにしておくのは、だらしがない、しつけが良くない、という考え方からです。
お日柄を気にする場合は、「大安」や「友引」に飾るのが良いとされています。カレンダーでチェックして、家族みんなで楽しく飾り付けができる日を選びましょう。
どこに飾る?飾る場所の注意点
雛人形はとてもデリケートです。長く美しく保つために、飾る場所にはいくつか注意したい点があります。
- 直射日光が当たらない場所:直射日光は、衣装の色褪せや、お顔のシミなどの原因になります。窓際など、直接日の光が当たる場所は避けましょう。
- 湿気の少ない場所:湿気はカビやシミの大きな原因となります。お風呂場やキッチン、加湿器の近くなど、湿気がこもりやすい場所は避けてください。
- エアコンの風が直接当たらない場所:エアコンの風が直接当たると、乾燥によってお顔の胡粉(ごふん)がひび割れたり、衣装が傷んだりすることがあります。風が当たらない場所に飾りましょう。
- 安定した平らな場所:倒れたり落ちたりしないよう、必ず安定した平らな場所に設置してください。家族がよく通る場所で、うっかりぶつかってしまうような所も避けた方が安全です。
家族みんなの目に入りやすいリビングなどが一般的ですが、これらの条件を満たす場所を選んであげることが大切です。
関東雛と京雛?正しい人形の並べ方
雛人形の主役、男雛と女雛の並べ方には、実は地域によって違いがあることをご存知でしょうか。「関東雛」と「京雛」で、左右の並びが逆になります。
日本の伝統的な考え方では、「左」が「右」よりも格上とされています(「左大臣」が「右大臣」より上位であるように)。そのため、古来の慣習に則っているのが「京雛」の並べ方です。
| 種類 | 男雛(お内裏様)の位置 | 女雛(お雛様)の位置 | 主な地域 |
| 京雛(きょうびな) | 向かって右 | 向かって左 | 京都を中心とした関西地方 |
| 関東雛(かんとうびな) | 向かって左 | 向かって右 | 関東地方を中心に全国的 |
では、なぜ関東では並び方が逆なのでしょうか。これは、明治時代以降、西洋の文化が入ってきたことが影響していると言われています。国際的な儀礼では、男性が女性の右側に立つのが一般的です(いわゆる「レディーファースト」の位置)。大正天皇が即位の礼で洋装の際に、西洋式の立ち位置に倣って皇后陛下の右側にお立ちになったことから、この並び方が全国に広まったとされています。
現在では、全国的に関東雛の並べ方が主流となっていますが、どちらが正しくてどちらが間違いということはありません。お持ちの雛人形が作られた地域の伝統や、ご家庭の慣習に合わせて飾ってあげましょう。迷った場合は、購入したお店に確認してみるのが確実です。
お祝いに華を添えるお道具の意味
雛飾りに並べられる小さなお道具たちにも、一つひとつに女の子の幸せを願う意味が込められています。代表的なものをいくつかご紹介します。
- 屏風(びょうぶ):お内裏様の後ろに立てる屏風は、結婚式の背景であると同時に、魔除けの意味もあります。金色の屏風は、娘の将来が光り輝くようにという願いが込められています。
- 雪洞(ぼんぼり):明かりを灯す道具で、結婚式を明るく照らし、祝祭の雰囲気を盛り上げます。
- 三宝(さんぽう):お供え物を乗せる台です。瓶子(へいし)に白酒などを入れ、飾ります。
- 菱餅(ひしもち):緑・白・ピンクの三色の餅を重ねたもので、それぞれ「健康・清浄・魔除け」の意味があるとされています。緑は新芽の芽吹く大地、白は雪、ピンクは桃の花を表し、春の情景を表現しているとも言われます。
- 雛あられ(ひなあられ):菱餅を砕いて作ったという説があります。関東では甘いポン菓子、関西では塩醤油味のあられが主流です。一年を通して娘が幸せでありますように、という願いが込められています。
- 桜・橘(さくら・たちばな):お内裏様の両脇に飾られる木です。古来、京都御所の紫宸殿(ししんでん)の庭に植えられていた「左近の桜、右近の橘」に由来します。桜には魔除けや邪気払いの意味が、橘には不老長寿の意味があるとされています。
- お嫁入り道具:箪笥(たんす)、長持(ながもち)、鏡台(きょうだい)、針箱(はりばこ)、茶道具など、豪華な嫁入り道具は、娘が将来、嫁入り先で不自由なく暮らせるようにという親の願いを表しています。
大切に保管するための片付け方
ひな祭りを楽しんだ後は、来年も美しい姿で会えるように、正しく片付けて保管することが大切です。少し手間はかかりますが、丁寧なお手入れが雛人形を長持ちさせます。
早く片付けないと婚期が遅れるって本当?
「雛人形を早く片付けないと、お嫁に行くのが遅くなる」という迷信をよく耳にしますよね。これを聞いて、慌てて片付ける方も多いのではないでしょうか。
実はこれ、科学的な根拠は全くありません。 この言い伝えには、いくつかの由来があると言われています。
一つは、「片付けがきちんとできないようなだらしない子は、良いお嫁さんになれないよ」という、しつけの意味合いが込められているという説です。面倒な片付けを後回しにしないように、という昔の人の知恵ですね。
もう一つは、雛人形が厄を引き受ける「身代わり」であることから、「いつまでも飾っておくと、厄が再び戻ってきてしまう」と考えられたため、という説です。厄払いが終わったら、速やかに納めるべきだという考え方です。
いずれにしても、これは迷信ですので、神経質になりすぎる必要はありません。しかし、雛人形を湿気やホコリから守るという意味では、やはり早めに片付けるのが理にかなっています。ひな祭りが終わったら、天気の良い、乾燥した日を選んで片付けるのがベストです。
来年もきれいに飾るための片付け手順
雛人形を片付ける際は、以下の手順で丁寧に行いましょう。
- 準備するもの:
- 柔らかい筆や毛ばたき
- きれいな布(メガネ拭きのような柔らかいものがおすすめ)
- ティッシュペーパーや柔らかい和紙
- 人形用の防虫剤
- 手袋(素手で触ると皮脂が付くため)
- ホコリを払う:まず、お人形やお道具についたホコリを、毛ばたきや柔らかい筆で優しく払います。細かい部分は息を吹きかけたりせず、筆先で丁寧に取り除きましょう。
- お顔を保護する:一番デリケートなのがお顔です。絶対に素手で触らないようにしてください。 ティッシュペーパーや和紙を二つ折りにして顔に当て、その上から紙を巻いて、テープなどで軽く留めて保護します。
- 一体ずつ包む:お人形を一体ずつ、柔らかい紙や布でふんわりと包みます。袖や裾など、形が崩れやすい部分は、間に薄紙を挟むと良いでしょう。
- 箱にしまう:購入時に入っていた箱に、隙間ができないように詰めていきます。隙間があると、中で人形が動いて傷つく原因になります。詰め物(薄紙など)を上手に使って、動かないように固定しましょう。
- 防虫剤を入れる:最後に、人形用の防虫剤を入れます。防虫剤は、直接人形や衣装に触れないように、箱の隅に入れるのがポイントです。種類の違う防虫剤を混ぜて使うと化学反応を起こすことがあるので、必ず一種類にしましょう。
- お道具も同様に:小さなお道具類も、一つひとつホコリを払い、傷がつかないように紙で包んでからしまいます。
最適な保管場所の条件
雛人形を来年まで保管しておく場所も非常に重要です。以下の条件を満たす場所を選びましょう。
- 湿気が少ない場所:カビの発生を防ぐため、湿気の少ない場所が絶対条件です。押し入れの上段や天袋などが比較的湿気が溜まりにくい場所です。
- 温度変化が少ない場所:極端な温度変化も人形を傷める原因になります。一年を通して温度が安定している場所が理想です。
- 直射日光が当たらない場所:箱に入れていても、長期間日光に当たると箱ごと劣化する可能性があります。暗所での保管が基本です。
- 重いものを上に乗せない:箱が潰れて中の人形が破損するのを防ぐため、上に重いものを置かないようにしましょう。
年に一度、秋のからっと晴れた日に虫干しをすると、さらに良い状態で保管できます。箱から出して風を通すだけでも効果があります。
知っておきたい防虫剤の選び方と使い方
雛人形を虫食いから守るために、防虫剤は欠かせません。しかし、使い方には注意が必要です。
- 必ず人形用のものを選ぶ:衣類用の防虫剤の中には、プラスチックや金糸・銀糸を変質させてしまう成分(ナフタリン系など)が含まれていることがあります。必ず「人形用」と表示されているものを選びましょう。
- 入れすぎない:たくさん入れれば効果が高まるわけではありません。商品の説明書に書かれている規定量を守りましょう。入れすぎると、化学成分が人形に悪影響を及ぼすことがあります。
- 直接触れないように:前述の通り、防虫剤の成分が直接人形に触れないよう、箱の四隅などに置くようにしてください。
- 毎年新しいものに交換する:防虫剤の効果は一年で切れるものがほとんどです。片付ける際に、毎年新しいものと交換しましょう。
雛人形に関するよくある質問Q&A
ここでは、雛人形に関して特によく寄せられる質問について、Q&A形式でお答えします。
次女や三女が生まれたら、雛人形はどうする?
これは多くの方が悩む問題です。結論から言うと、いくつかの考え方があります。
- 理想は一人にひとつ:雛人形は、その子の厄を代わりに引き受ける「お守り」です。そのため、本来は姉妹で共有するのではなく、一人にひとつずつ用意してあげるのが最も丁寧な形とされています。長女に七段飾りがあるなら、次女には親王飾りや木目込み人形など、少し違うタイプのものを贈るという方も多いです。
- 新しい人形を「付け足す」:長女の雛飾りに、次女のために新しいお人形(市松人形や童人形など)を付け足してお祝いするという方法もあります。これは「お迎え雛」と呼ばれ、姉妹仲良く一緒に飾ることができます。
- 家族の雛人形として共有する:住宅事情などで、どうしても二つ飾るのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、長女の雛人形を「家族の雛人形」として、姉妹みんなの幸せを願って飾るという考え方もあります。その際は、ひな祭りを姉妹それぞれの名前でお祝いしてあげることが大切です。
どの方法が正しいというわけではありません。ご家庭の状況や考え方に合わせて、姉妹が寂しい思いをしないように配慮してあげることが一番重要です。
ママや祖母の雛人形を娘に譲ってもいい?
ママが大切にしてきた雛人形を、自分の娘にも受け継がせたい、という気持ちはとても素敵ですよね。しかし、これも「お守り」としての意味合いから考えると、少し注意が必要です。
雛人形は、持ち主の厄を一身に引き受けてくれています。そのため、ママの厄を引き受けた雛人形をそのまま娘に譲ると、その厄も一緒に引き継いでしまう、と考える向きもあります。そのため、基本的には新しくその子のためのものを用意するのが良いとされています。
しかし、代々受け継がれてきた立派な雛人形がある場合や、どうしても譲りたいという場合は、一度お祓いや供養をしてもらうという方法があります。神社やお寺によっては、人形の魂抜き(お祓い)をして、新たな持ち主のためのお守りとして生まれ変わらせるための儀式を行ってくれるところがあります。そうした手順を踏むことで、安心して娘さんに譲り渡すことができるでしょう。
最終的には、ご家族の気持ちが一番大切です。伝統的な意味合いを理解した上で、どうするかを決めると良いでしょう。
雛人形の一部が壊れてしまったら?修理はできる?
長年飾っていると、うっかり小物をなくしてしまったり、人形の手足が取れてしまったりすることもあるかもしれません。そんな時は、諦めずにまずは購入したお店に相談してみましょう。
- 購入店に相談する:多くの場合、購入したお店で修理の相談に乗ってくれます。小道具の紛失であれば、部品だけを取り寄せてもらえることもあります。
- 人形専門の修理工房に依頼する:お店で対応できないような本格的な修理(顔の塗り直し、衣装の修復など)が必要な場合は、人形専門の修理工房に依頼するという方法があります。インターネットで「雛人形 修理」などと検索すると、専門の職人さんを見つけることができます。
修理には費用と時間がかかりますが、大切な雛人形を蘇らせることができます。壊れたからといってすぐに捨ててしまうのではなく、まずは修理可能かどうかを調べてみることをお勧めします。
役目を終えた雛人形はどうすればいい?(供養について)
娘さんが成長し、嫁いでいくなどして、雛人形がその役目を終える時が来ます。お守りとして長年見守ってくれた雛人形を、ゴミとして処分するのは忍びないですよね。そんな時は、「人形供養」をして、感謝の気持ちを込めてお別れをしましょう。
人形供養は、全国各地の神社やお寺で行われています。
- 人形供養祭:年に一度、決まった日に多くの人形を集めて供養祭を行っている神社やお寺があります。有名なところでは、東京の明治神宮人形感謝祭や、和歌山の淡嶋神社などがあります。
- 通年受付:お寺や神社によっては、年間を通して人形供養の申し込みを受け付けているところもあります。持ち込みだけでなく、郵送で受け付けてくれるところも多いです。
- 葬儀社や専門業者:最近では、葬儀社や人形供養を専門に行う業者がサービスを提供している場合もあります。
インターネットで「人形供養 (お住まいの地域名)」などと検索し、受付期間や供養料、申し込み方法などを確認してみてください。大切なお守りだからこそ、最後まで丁寧に扱ってあげたいですね。
雛人形は一人にひとつって本当?
前述の通り、雛人形は女の子一人ひとりの厄を引き受けるお守りであるため、「一人にひとつ」が基本とされています。これは、昔からの伝統的な考え方です。
しかし、これは絶対的なルールではありません。現代の住宅事情やライフスタイルに合わせて、ご家庭ごとに最適な形を選ぶのが一番です。例えば、姉妹で一つの雛人形を共有し、その代わりにお名前の入った旗や、それぞれにちなんだ小さな飾り物を添えてお祝いするご家庭もあります。
大事なのは、形式にこだわりすぎることではなく、お子様一人ひとりの誕生を喜び、健やかな成長を願う気持ちです。その気持ちがあれば、どんな形であっても、素晴らしいひな祭りのお祝いになるはずです。
まとめ
今回は、雛人形に関する情報を、歴史から選び方、飾り方、そして片付け方まで、幅広くご紹介しました。たくさんの情報がありましたが、一番大切なのは、生まれてきてくれた女の子の幸せを願う「心」です。雛人形は、その愛情を形にした、とても素敵な日本の伝統文化です。
この記事で得た知識をもとに、ご自身の家庭に合った方法で、ひな祭りという素晴らしい行事を楽しんでください。雛人形を囲んで、家族みんなの笑顔が溢れる、温かい桃の節句を迎えられることを心から願っています。お子様が大きくなった時、家族みんなでお祝いした楽しい思い出とともに、雛人形はかけがえのない宝物になることでしょう。

